「天神様の配流」

 天神様は、大宰府天満宮、北野天満宮などの祭神で、平安時代、時の権力者
 藤原時平の策謀により九州の大宰府に配流になった菅原道真をいう。    
 学問の神様として有名。

 吉原通いにうつつを抜かす宗匠(文化、芸能の道の師匠)が、遊びの度が過ぎて、
 片っ端から家財道具を質に入れ、家の中は空き家同然、金目の物は何一つ
 残っていない。
 ただこれだけは、と最後まで大事に取って置いた探幽(江戸初期の有名画家
 狩野探幽のこと)の描いた天神さまの掛け軸の前に座り、
 「ちょっとした気の迷いで、吉原の女狐に魂を奪われ、ご覧の通り家の中は空き家
 同然のがらんどう。
 毎日、さぞ寂しい思いをしていらっしゃることでしょうから、今日からはしばらくの間、
 賑やかな質屋の倉にお移りくださいませ」と言って、
 ふと見ると掛け軸の中の天神さまが、目に一杯の涙をためていらっしゃるので、
 「これはまた、どうしてお泣きなさるのですか?」と聞くと、天神さま、顔をくもらせて、
 「またしても流されるのであろうか・・・・」

 出典:江戸諷詠散歩(秋山忠彌著) 文春新書

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