江戸時代の文化も宝暦の頃から当時の文化圏の上方からはっきりと中心が江戸に移ってきた。
 その中から庶民の文化文芸のひとつとして愛されたのが「笑話」「軽口噺」とも
 いわれた「小噺」。(もとは中国からやってきた)
 この小噺は、今のショートコントに通じる面白さがある。
 
 「燈篭見物」
 この燈篭とは、昨年10月の「江戸東京 吉原周辺史跡めぐり」で紹介した玉菊の燈篭。
 玉菊の供養は年々賑やかになり、吉原の秋の行事として欠かせないものになった。

 妓楼を抜け出して、燈篭見物に行った田舎者が、見物から帰ってきたが同じ造り
 の妓楼がずらりと並んでいるので、自分が上がっていた妓楼がどれだかわからず
 困っていた。
 それでも、わずかな記憶をたよりに、一軒一軒捜し歩くうちにやっとそれらしい
 妓楼を見つけ出した。
 そこで、中の若い者を呼んで、
 「ここの客で、燈篭見物に出かけてまだ帰って来ていない客はいないかね?」
 と尋ねると、
 「1人おいでになりますが、まだお帰りになっておりません」
 というので、田舎者は真剣な顔で、
 「よーく俺の顔を見てくれ。ひょっとしたらその客、俺と違うか?」

 川添 裕著「江戸の見世物」(岩波新書)より抜粋
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