「天狗の鼻」は、ナニを想像させるのは、江戸時代も同じで、前回の小噺に似た
 小噺をもう一話紹介しよう。
 「抜きなんし」
 えー、大文字楼・・・・吉原の大店の中でも屈指の見世でございます。
 こういうところは、引手茶屋からお客が送り込まれて参りますから。花魁衆が
 張り見世なんぞ張る必要はない。
 そろそろ、客を迎える時刻ですからナ、花魁衆が湯から上がってもろ肌ァ脱いで、
 ふくよかな胸のふくらみなんぞ丸出しにして、顔から襟元ンところに、白粉をぬって
 いまお化粧の真っ最中・・・・。
 実にどうも、例えようもないあでやかさでございます。
 ちょうどその時、天狗がナ、「飛行の術」というのを使って空の上を飛んできた。
 廓の上へ来てちょいと下界をのぞくていと、その光景ですからたまりません。
 クラクラッとした拍子に術なんぞ忘れてしまってドシーン!落ちたところが大文字の庭でナ。
 築山の所にあのグーッと大きな長い鼻がブスッと突き刺さった。さァ、もがいたって抜けるもんじゃない。
 見世中は大騒ぎで、若い衆なんぞも気の毒がって、寄ってたかって手助けするがダメ。
 その時、化粧をし終えたのがひとりの花魁で、さすがにお職の貫禄でございます、
 人を制しておいて、庭下駄ァつっかけてゆっくりそばへ寄り、懐中から桜紙を出し
 てナ、天狗の鼻ンところをヒョイとつまんで、・・・・「さア、主、抜きなンし」
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